ETF は、投資信託よりも信託報酬が安いことが多いです。ETFの信託報酬が安いのは、販売会社に手数料を支払わなくてよいからです。
ただ、ETFは配当をかならず支払うという欠点があるため、税金が余計にかかります。また、インデックスファンドの信託報酬がかなり下がってきており、ETFの強みである「信託報酬の安さ」の魅力も少なくなっています。初心者は、ETFではなく、簡単に積み立てることができるインデックスファンドを使うべきです。
ETFは、コストが非常に安いのが利点
ETFのコスト(=信託報酬)が安いのは、販売会社への信託報酬の支払いがないからです。投資信託の場合、信託報酬を、"販売会社"・"運用会社"・"信託銀行"に支払います。ETFの場合、信託報酬を、"運用会社"・"信託銀行"に支払います。
例えば、国内株式の低コストインデックスファンドである―"ニッセイ TOPIXインデックスファンド"の信託報酬は、年0.18%(税抜)です。支払いの内訳は、販売会社:0.08%(税抜)、運用会社:0.08%(税抜)、信託銀行:0.02%(税抜)となっています。
一方、国内株式ETFの―"TOPIX連動型上場投資信託"(銘柄コード:1306)の信託報酬は、0.11%(税抜)です。支払いの内訳は、運用会社:0.075%(税抜)、信託銀行:0.035%(税抜)となっています。上記の支払先に、「販売会社」がないことに注目してください。
また、ETFは、商品のバリエーションも増えてきて、魅力が上がっています。以前のETFのバリエーションは、ほぼ国内株式しかありませんでした。現在は、国内株式の他に、外国株式や、外国債券なども用意されています。そのため、ETFのみで分散投資もできなくはない状況になっています。ただ、現在でも、国内債券のETFはありません。
ただ、確かにETFに魅力はあるですが、株式であるため、以下のようなデメリットもあります。
コストの安さを台無しにする―ETFの各種支払い
ETFの弱点は、1%以上もの配当*1が必ず支払われることです。各ETFの配当利率を、確認してみましょう。
*1 投資信託の「分配金」に相当します。
- 国内株式ETFの"TOPIX連動型上場投資信託"(銘柄コード:1306)の配当利率は、年1.59%です(2005年~2015年の履歴より算出)。
- 外国株式ETFの"MAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場投信"(銘柄コード:1550)の配当利率は、年1.87%です(2012年~2014年の履歴より算出)。
- 外国債券ETFの"上場インデックスファンド海外債券毎月分配"(銘柄コード:1677)の配当利率は、年3.95%です(2011年~2014年)。
"配当が必ず支払われること"―のどこが弱点かというと、配当の20.315%が税金で持って行かれるからです。
さらに、問題なのは、「ETFが買った価格より値下がりしている」場合でも、配当の20.315%が税金で持って行かれてしまうことです。例えば、ETFを1,500円で買って1,300円に値下がりしている場合でも、20円の配当がでると、しっかり4円(=20円×20.315%)の税金が持って行かれます。
一方、投資信託は、このように"損失がでている"場合、分配金に税金はかかりません。投資信託の場合、値下がりしている状態でだされた分配金は「特別分配金」となり、課税の対象にならないからです。
また、ETFは株式なので、購入するときと、売却するときとに、株式手数料がかかります。株式手数料は、ネット証券の場合だと、月5万円の積み立てで、100円くらいかかります。
なお、松井証券なら、1日10万円までの―株式手数料が無料です。ただし、松井証券は、低コストのインデックスファンドをひとつも取り扱っていません。そのため、低コストのインデックスファンドで分散投資したい場合には、不向きです。
上記のように「ETFには余計な支払いがあること」に加え、「インデックスファンドとの信託報酬の差が少なくなってきていること」も、初心者にETFをおすすめできない理由になっています。
ETFと、インデックスファンドとのコストの差は、徐々に縮まりつつある
ETFと、インデックスファンドとの信託報酬の差は、年々縮まっています。以下で比較してみましょう。
まず、ETFのコスト一覧は以下です。
- 国内株式のETF:"TOPIX連動型上場投資信託"(銘柄コード:1306)の信託報酬は、年0.11%(税抜)です。
- 外国株式のETF:"MAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場投信"(銘柄コード:1550)の信託報酬は、年0.25%(税抜)です。
- 外国債券のETF:"上場インデックスファンド海外債券毎月分配"(銘柄コード:1677)の信託報酬は、年0.25%(税抜)です。
次に、低コストインデックスファンドのコスト一覧は、以下です。
- 国内株式の低コストインデックスファンド:"ニッセイTOPIXインデックスファンド"の信託報酬は、年0.18%(税抜)です。
- 外国株式の低コストインデックスファンド:"たわらノーロード 先進国株式"の信託報酬は、年0.225%(税抜)です。
- 日本債券の低コストインデックスファンド:"たわらノーロード 国内債券"の信託報酬は、年0.15%(税抜)です。
- 外国債券の低コストインデックスファンド:"たわらノーロード 先進国債券"の信託報酬は、年0.20%(税抜)です。
以前は、インデックスファンドのコストは、1%前後のものが主流でした。ですが、上記から分かるように、現在では0.2%程度まで下がっています。
信託報酬が下がってきたのは、インデックスファンドの各運用会社が、低コスト競争をしているからです。低コスト競争は、今も続いており、今後もこの流れは加速していくでしょう。ETFと、インデックスファンドとの信託報酬の差はいずれ、ほとんど無くなるのかもしれません。
初心者は、ETFを使うべきではない
初心者は、老後資金を作るための積み立てに、ETFを使わないでください。
なぜなら、ETFは、ほったらかしでの投資が困難だからです。ほったらかしでの投資が困難なのは、ETFは基本的に、銀行引き落としを使った―自動積立ができないからです。自動積立ができないため、ETFを積み立てるには、毎月、証券会社にログインして、購入注文をださなければなりません。
なお、ネット証券の中では、カブドットコム証券のみ、ETFの積み立ての仕組みが用意されています。ただ、この仕組みを利用するには、手数料がかかります。手数料は、"月3万円の積み立てなら167円"・"月5万円の積み立てなら301円"と、それほど高くはありません。しかし、それほど高くない手数料とはいえ、「信託報酬の安さが魅力のETF」を積み立てるために―余計な手数料を支払うのは、本末転倒です。
また、ETFは株式ですから、最低取引株数が決まっており、投資信託のように1円単位で投資できません。最低取引株数とは、ある銘柄は10株きざみでしか買えない、別の銘柄は100株きざみでしか買えない―といった制限です。そのため、毎月3万円投資しよう―という場合に、使いづらいです。例えば、最低取引株数:10株の銘柄を毎月3万円購入する場合、ETFが1株1,000円のときは30株買い、1株2,000円のときは10株か20株買う―といった調整が、毎月必要になります。
そして、ETFは、国内株式以外、適正価格で買えません。適正価格で買えないのは、ETFの取引が活発におこなわれていないのが理由で、本来の価格と、取引価格との間に価格差がでてしまっているからです。
例えば、売りたい!と思っても、買い手がなかなかつかないために、本来の価格よりも安い価格で売らざるを得なかったりします。逆に、買いたい場合にも、本来の価格より高い価格で買わざるを得ない場合もあります。
この"本来の価格と、取引価格との差"は、±1%程度あるのが普通になっています。なお、最初に"国内株式以外は"と書いたように、国内株式の1306だけは取引が活発なので、本来の価格からそれほど離れない価格(価格差は±0.1%程度)で買えます。
老後資金を作るには、インデックスファンドを銀行口座引き落としで積み立てるのがベストです。