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投資信託への投資を始めるなら、NISA口座を開くこと

 投資信託の税金には、分配金にかかる税金と、譲渡益にかかる税金とがあります。NISA口座を使えば、この2つの税金がかからなくなります。

 ただ、NISA口座にも欠点はあります。 しかし、NISA口座を使うことで、節約できる税金はおおきいです。積み立てをつづければ、投資資金はいずれ大金になるため、かかる税金も大金になるからです。


投資信託の税金には、分配金にかかる税金・譲渡益にかかる税金がある

 投資信託にかかる税金には、"分配金にかかる税金"と、"譲渡益にかかる税金"とがあります。

 分配金にかかる税金は、儲かっているときだけかかります。「分配金がでているのだから儲かっているに決まっているじゃないか!」と思われるかもしれませんが、分配金は、儲かっていない場合にも支払われます。例えば、10,000円の時に買った投資信託が、9,000円に下がった場合でも、500円の分配金が支払われることがあります。

 儲かっているときに支払われる分配金を、「普通分配金」と呼び、課税の対象になります。普通分配金が支払われるケースとして、例えば、10,000円の投資信託を購入後、12,000円に値上がりし、500円の分配金が支払われた―場合が考えられます。この500円は、2,000円(=12,000円-10,000円)の儲けから支払われていますので、投資で得た利益になります。利益がでているので、この500円に、税金がかかるわけです。

 また、儲かっていないときに支払われる分配金は、「特別分配金」と呼び、課税の対象になりません。特別分配金が支払われるケースとして、例えば、10,000円の投資信託を購入後、9,000円に値下がりしているにもかかわらず、500円の分配金が支払われた―場合が考えられます。この500円は、利益からでたものではありません。そもそも1000円(=9,000円-10,000円)の損失がでているわけですから、利益はありません。利益がでていないにもかかわらず、"運用会社が運用資産を取り崩して"分配金を支払っているだけなので、税金がかからないわけです。

 一方、譲渡益にかかる税金も、儲かっているときだけかかります。例えば、10,000円で購入した投資信託を、12,000円で"売却"した場合、儲けの2,000円(=12,000円-10,000円)に、"譲渡益にかかる税金"がかかることになります。逆に、損失がでている場合は、譲渡益にかかる税金はかかりません(10,000円で購入した投資信託を、8,000円で売却した場合など)。

 なお、譲渡益への課税は、儲けが出ていても、売却しなければかかりません。売却せず、何十年と運用し続ければ、"譲渡益にかかる税金"は支払う必要がないのです。将来、売却するときには支払わなければなりませんが、そのときまで「支払いを繰り延べできる」という点では、節約できる税金と言えるでしょう。


投資信託の税金は、NISA口座を使えば非課税になる

 NISA口座は、「投資できる額は年120万円まで」という制限付きですが、上記の"分配金にかかる税金"・"譲渡益にかかる税金"がかかりません。毎年、120万円の投資枠が追加されていきます。ただし、残った投資枠は、翌年に持ち越せません。例えば、年90万円投資して投資枠が30万円残っていても、次の年の投資枠は、150万円(=30万円+120万円)ではなく、120万円になります。

 NISA口座で、"分配金にかかる税金"が、かからなくなるのは大きいです。分配金は勝手に支払われ、拒否することはできません。その分配金から、自動的に税金が引かれてしまうわけです。"自動的に引かれてしまう税金"がかからなくなるのは、NISA口座の大きなメリットです。

 また、長期投資の場合、"譲渡益にかかる税金"がかからないのも、大きなメリットになります。長期投資は収益が積み重なっていくため、売却する際に、非常に大きな譲渡益がでる可能性があるからです。


税金が非課税になるNISA口座だが、欠点もある

 NISA口座は、税金を非課税にできる便利な口座ですが、欠点もあります。NISA口座の欠点には、まず、「最大でも10年までしか使えないこと」があります。NISA口座の120万円の投資枠は、5年しか運用できません。5年運用した後は、その年に追加される"120万円の枠に移すか"、投資した資産を"課税口座に移すか"選ばなくてはなりません(この移動の際に、税金はかかりません)。

 追加される120万円の枠に移した場合は、非課税期間を5年延長できることになります。ただし、この延長は、1回だけしかできません。延長分(5年)が終わった後は、課税口座に移すしかなくなります。

 次に、NISA口座の欠点には、NISA口座から課税口座に移す際に、「買った価格よりも安い価格が、取得価格(=税金の計算に使われる―買った価格)になってしまう可能性があること」があります。NISA口座から、課税口座に運用資産を移した場合、課税口座に移したときの価格が、取得価格になってしまうからです。つまり、移したときの価格で、取得価格が上書きされてしまうのです。

 この「取得価格の上書き」のため、10年のタイミングでちょうど暴落が起こるなど、タイミングが悪ければ、買った価格よりも安い価格が、取得価格になってしまう可能性があります。例えば、NISA口座で10,000円のときに購入した投資信託が、10年後に8,000円になっていた場合、8,000円で取得したことになってしまうのです。このあと、8,000円→9,000円に値上がりしたときに売却すると、1,000円の儲けがでたことになってしまい、1,000円に20.315%の税金がかかります(本当は10,000円で買っているわけですから、儲けはでていません。)。このように、儲かっていないのに税金がかかる危険性があるのです。

 最後に、NISA口座の欠点には、「口座開設に時間がかかること(1~2週間くらい)」があります。NISA口座開設に時間がかかるのは、NISA口座に、1人1口座しか開けない―という制限があるからです。その制限のため、NISA口座を申し込むには住民票の提出が必要になり、複数のNISA口座を開いていないか―というチェックが入ります。そのチェックのため、NISA口座の開設には時間がかかってしまうのです。


税金は運用資産を目減りさせるため、運用益に大きく影響する

 税金が運用に与える影響は、非常に大きいです。税金の影響が大きいのは、投資信託の税率が20.315%と高いからです。

 例えば、年1%の分配金を支払う投資信託なら、年0.20315%(=1%×20.315%)コストが増えるのと同じことになります。

 年0.20315%という税金は、資産額が大きくない場合はたいした額にはなりませんが、資産額が積み上がった場合は相当な額になります。例えば、資産が積み上がって5,000万円になった場合、年0.20315%の税金は、年10.16万円(=5,000万円×0.20315%)にもなります。資産額は、ずっと一定ではありません。積立投資によって、毎月積み上がっていくことを忘れないでください。

 また、年0.20315%の税金がかからなければ、何十年も運用したときの運用結果も大きく変わります。運用結果が大きく変わるのは、取られなかった0.20315%の税金分を、そのまま運用し続けられるからです。0.20315%というのは、わずかな額かもしれませんが、何十年も運用すると非常に大きな額になります。

 運用結果がどの程度変わるのか、実際に計算してみましょう。計算の条件は、初期投資額100万円、年60万円(=月5万円)積立、収益は年5%、10年運用する―ということにします。なお、課税口座(=特定口座もしくは、一般口座)は、分配金に税金がかかるため、収益は4.79685%(=5%-0.20315%)に下がります。計算結果は、10.24万円(=917.56万円:NISA口座の運用結果-907.32万円:課税口座の運用結果)も差がでました。NISA口座を使うかどうかで、これだけの違いがでてしまうのです。

 さらに、NISA口座の場合、買った価格と、売った価格との差額、217.56万円(=917.56万円-700万円*1)に税金がかかりません。たとえ、一括でNISA口座の投資信託をすべて売却したとしても、1円も"譲渡益にかかる税金"がかかることはありません。一方、課税口座で、同じ額を一括で売却すると、44.20万円(=917.56万円×20.315%)もの税金がかかります。実際には一括で売却することはないかもしれませんが、毎月少しずつ売却する場合も、結果的には大きな"譲渡益にかかる税金"を支払うことになります。
*1 投資したお金(=元本):初期投資額:100万円+年60万円×10年

 新しく投資を始める際は、必ずNISA口座で投資を始めてください。NISA口座で投資を始めることで、分配金に税金がかからなくなるため、運用中に資産が目減りするのを防止できます。また、譲渡益に税金がかからなくなるため、将来取り崩すときに、積み立てた資産が目減りするのを防止できます。せっかくNISAという―「積み立てを支援する制度」があるのですから、積極的に使うべきです。








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