投資信託は、投資家保護の仕組みが整っている投資商品です。ただ、どういう仕組みで投資家を保護しているのか?は、あまりご存じない方もおられるでしょう。では、投資信託は、どういう仕組みになっているのでしょうか?
投資信託の仕組みは、以下のようになっています。
- 投資信託は、「販売」・「運用」・「資金管理」という―運用に必要な3つの役割を、それぞれ別の会社が担当する仕組みになっています。
- 役割分担するメリットは、資金の安全性と、役割の質とが高まることです。
- 役割分担するデメリットは、複数の手数料がかかることです。
投資信託は、3つの役割を分担する仕組み
投資信託は、販売・運用・資金管理を、それぞれ別の金融機関が役割分担する仕組みになっています。なお、「販売」と「運用」、または「販売」と「資金管理」を、同じ金融機関がおこなうこともあります。
まず、投資信託の「販売」の役割を担当するのは、販売会社です。販売会社は、「販売」の文字通り、投資家に投資信託を売る仕事をしています。投資信託を売った後は、投資信託の分配金・売却代金などを、投資家の口座に入金する仕事をします。
次に、投資信託の「運用」の役割を担当するのは、運用会社です。運用会社は、販売会社が集めた資金を信託銀行に信託し、信託した資金の「運用を指図する」仕事をしています。「運用を指図する」というと不思議に思われるかもしれませんが、運用会社は指示を出すだけで、実際に投資商品を売買するのは「資金管理」をおこなう―信託銀行です。「投資家の資金を信託銀行に信託する」仕組みになっているため、運用会社が倒産しても、運用会社の負債の返済に投資家の資金が使われる心配がありません。
そして、投資信託の「資金管理」の役割を担当するのは、信託銀行です。信託銀行は、運用会社から信託された資金を管理し、運用会社から受けた運用指示にしたがって資金を運用します。このように、「投資家の資金が最終的に信託銀行で管理される」仕組みになっているため、販売会社・運用会社のいずれかが倒産しても、資金の安全性は確保されます。また、信託銀行が倒産したとしても、投資家の資金が、信託銀行の負債の返済に使われることはありません。信託銀行の負債の返済に使われることがないのは、「投資家の資金と、信託銀行の資金とは分別して管理」するように法律で定められているからです。なお、投資信託の資金の流れについて、詳しく書かれた図がありましたので、以下に引用します。
図:投資信託の資金の流れ(引用図)
上図は、石原敬子 『ポケット図解 最新株・証券用語がよーくわかる本[第3版]』 株式会社秀和システム、2012年、297頁より引用。
メリットは、資金の安全性と、役割の質とが高まること
投資信託は、分業することで、投資家の資産の安全性が高まっています。資産の安全性が高まるのは、先ほど解説したように、販売会社・運用会社・信託銀行のどれが倒産しても投資資金が守られる仕組みになっているからです。
また、投資信託は、分業することでそれぞれの役割の質が上がっています。役割の質が上がるのは、それぞれの役割を、それぞれ得意な金融機関が担当しているからです。例えば、投資商品の販売が得意な―証券会社が投資信託を売ることで、複数の投資信託を1つの窓口で購入することができるようになっています。また、資金の管理が得意な―信託銀行に資金の管理を任せることで、投資家の資金を、金融機関の倒産から守ることができるようになっています。
デメリットは、複数の手数料がかかること
分業のデメリットは、さまざまな金融機関がかかわるため、複数の手数料がかかることです。投資信託の手数料には、「販売手数料」、「信託報酬」、「信託財産留保額」があります。
まず、投資信託を購入した際は、販売手数料を支払わなくてはなりません。販売手数料は、販売会社に支払う手数料で、投資信託の購入額の0~3%程度かかります。なお、同じ投資信託を購入した場合でも、購入する販売会社によって手数料率が異なることがあるので注意が必要です。例えば、Aファンドを購入する場合、B証券会社で購入すると1%の販売手数料がかかる、C銀行で購入すると3%の販売手数料かかる―ということがあります。
次に、投資信託を保有している間はずっと、信託報酬を支払わなくてはなりません。信託報酬は、販売会社・運用会社・信託銀行の3者全てに支払う手数料で、信託財産から毎日日割りで徴収されるため、支払いの手続きをする必要はありません。取り分の割合としては、信託銀行が少しだけ受け取り、残りを販売会社と、運用会社とが半分ずつ分け合うことが多くなっています。
そして、投資信託を売却する際は、信託財産留保額を支払わなくてはなりません。信託財産留保額は、売却したファンドに支払う手数料で、投資信託の売却額の0~2%程度を支払わなくてはなりません。売却したファンドに手数料を支払う必要がある理由は、信託財産留保額が、「売却にかかるコストを売却した人が負担する」―といった意味合いの手数料だからです。売却にかかるコストとは、売却した投資家に支払うための「現金を用意するために必要なコスト」です。現金を用意するには、保有している資産を売却する必要があり、売却には売却手数料がかかります。ただし、信託財産留保額は、厳密には手数料とは言えないかも知れません。なぜなら、自分が売却する際は手数料になりますが、他の人が売却する際はファンドの収益になるからです。