投資を検討しているバランスファンドのリスクを計算することで、自分がその投資商品に投資しても大丈夫か―という判断ができます。リスクを計算すると、そのファンドが、どの程度値下がりする可能性があるかわかるからです。ただ、リスクの計算には"過去のインデックスの値動きデータ"が必要になるのですが、一般投資家がこのデータを手に入れるのは困難です。では、バランスファンドのリスクは、どうやって計算したら良いのでしょうか?
バランスファンドのリスクの計算に、"インデックスの値動きデータ"の代わりに、比較的容易に手に入る―"インデックスファンドの過去の値動きデータ(この記事ではSMTシリーズを使用)"を使うと良いでしょう。バランスファンドのリスクの計算は、以下の方法で行います。
- まず、Yahoo!ファイナンスの時系列データで、SMTシリーズの過去の値動きデータ(2009年以降)を取得する
- つぎに、取得したSMTシリーズのデータを使って、"リスク計算に必要なデータ"(各資産のリスク・相関係数)を計算する
- 最後に、リスク計算に必要なデータを使って、バランスファンドのリスクを計算する
SMTシリーズの過去の値動きデータを取得
まず、Yahoo!ファイナンスの時系列データで、SMTシリーズの過去の値動きデータ(2009年以降)を取得します。値動きデータを取得するSMTシリーズの銘柄は、以下です。
- SMT TOPIXインデックス・オープン
- SMT グローバル株式インデックス
- SMT 国内債券インデックス・オープン
- SMT グローバル債券インデックス
- SMT J-REITインデックス・オープン
- SMT グローバルREITインデックス
- SMT 新興国株式インデックス・オープン
- SMT 新興国債券インデックス・オープン
先ほど挙げた―SMTシリーズの値動きデータを、Yahoo!ファイナンスで取得します。値動きデータの取得方法は、以前の記事(希望の期間のリスクデータ取得方法)の手順1~3を参考にしてください。
1.まず、Yahoo!ファイナンスで希望期間の値動きデータ(月次)を入手します。
2.次に、1の不要な部分(=純資産総額)を削除します。
3.続いて、データを古い順に並べ替えます。
※ クリックで拡大します。
※ データ取得元:Yahoo!ファイナンス
なお、SMTシリーズを使う理由は、"バランスファンドのリスク計算に必要な―値動きデータ取得"にちょうどよい銘柄だからです。なぜなら、"バランスファンドのリスク計算に必要な商品"(国内REITや外国REIT、新興国株式など)が全て用意されているため、必要なデータがすべて揃うからです。また、運用開始から5年以上たっていて、比較的長い期間のデータが取れるからです。
リスク計算に必要なデータを計算
つぎに、取得したSMTシリーズのデータを使って、"リスク計算に必要なデータ"(各資産のリスク・相関係数)を計算します。計算方法は、以下です。
(ア)まず、SMTシリーズのデータを使って、各資産のリスクを計算します。各資産のリスクの計算方法は、先ほどの記事(希望の期間のリスクデータ取得方法)の手順4を参考にしてください。
4.最後に、3を使って、リスクを求めます。
手順4の方法で計算すると、各資産のリスクは以下の数値になります。
資産名 | リスク |
---|---|
国内株式 | 17.83% |
外国株式 | 18.81% |
国内債券 | 1.50% |
外国債券 | 9.62% |
国内REIT | 21.34% |
外国REIT | 22.04% |
新興国株式 | 22.98% |
新興国債券 | 13.65% |
(イ)つぎに、SMTシリーズのデータを使って、相関係数を計算します。相関係数の計算は、エクセルを使って行います。具体的には以下です。
・(エクセル2013の場合)分析ツールアドインを有効にします。分析ツールを有効にするための手順は、以下です。
- 上部のメニューから、ファイル>オプションを選択。
- Excelのオプションダイアログが表示されるので、左側の"アドイン"を選択し、右側の"管理(A)"の横にある" 設定(G)"をクリック。
- アドインのダイアログが表示されるので"分析ツール"のチェックボックスにチェックを入れ、"OK"をクリック。
※ エクセルが他のバージョンの場合、分析ツールは、はじめから有効になっているかもしれません。
・分析ツールを使って、SMTシリーズのデータの各資産の相関係数を計算します。分析ツールで相関係数を計算する手順は、以下です。
- 上部メニューのデータリボン内にある"データ分析"ボタンをクリック。
- データ分析というダイアグログが表示されるので、"相関"を選んで"OK"をクリック。
- 相関というダイアログが表示されるので、入力元に、計算したいセルをすべて選択(例では"$B$4:$I$72"を選択しています)。出力オプションに、出力先を選択(例では"$T$2")します。
- 選択できたら、"OK"をクリック。
上記の方法で相関係数を計算すると、各資産の相関係数は、以下のように計算されます。なお、計算後は各項目が、"列1"・"列2"のように表示されています。それぞれ、国内株式・外国株式のように書き直してください。
※ クリックで拡大します。
参考記事:各アセットクラスのリターン、リスク、相関係数(2009年〜2012年)(リンク切れ)
参考記事:エクセルによる相関係数の求め方(外部サイト)
バランスファンドのリスクを計算
最後に、"リスク計算に必要なデータ"を使って、バランスファンドのリスクを計算します。バランスファンドのリスクの計算方法は、以前の記事(資産を組み合わせた場合のリスク計算)を参考にしてください。上記の記事では、2つの資産を組み合わせた場合のリスク計算と、3つの資産を組み合わせた場合のリスク計算とを解説しています。バランスファンドは3つ以上の資産を組み合わせたものが多いので、上記の記事よりも、計算式が長くなります。例えば、4つの資産を組み合わせて投資する―ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)の場合、以下のような計算式になります。ちなみに、このファンドの投資割合は、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券に各25%ずつです。
Aの割合2乗×Aのリスク2乗+Bの割合2乗×Bのリスク2乗+Cの割合2乗×Cのリスク2乗+Dの割合2乗×Dのリスク2乗
+2×Aの割合×Aのリスク×Bの割合×Bのリスク×相関係数(AとBの)
+2×Aの割合×Aのリスク×Cの割合×Cのリスク×相関係数(AとCの)
+2×Aの割合×Aのリスク×Dの割合×Dのリスク×相関係数(AとDの)
+2×Bの割合×Bのリスク×Cの割合×Cのリスク×相関係数(BとCの)
+2×Bの割合×Bのリスク×Dの割合×Dのリスク×相関係数(BとDの)
+2×Cの割合×Cのリスク×Dの割合×Dのリスク×相関係数(CとDの)
上記の計算の結果を標準偏差に変換すると、ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)のリスクは、11.67%だとわかります。具体的な計算式は、以下です。なお、"Aに国内株式"、"Bに外国株式"、"Cに国内債券"、"Dに外国債券"を当てはめて計算しました。
0.25^2*0.1783^2+0.25^2*0.1881^2+0.25^2*0.015^2+0.25^2*0.0962^2
+2*0.25*0.1783*0.25*0.1881*0.955069
+2*0.25*0.1783*0.25*0.015*0.685256
+2*0.25*0.1783*0.25*0.0962*0.954994
+2*0.25*0.1881*0.25*0.015*0.836991
+2*0.25*0.1881*0.25*0.0962*0.937318
+2*0.25*0.015*0.25*0.0962*0.688558
=0.01361083(分散)
√0.01361083 = 11.67%(小数点第3位四捨五入)