初期投資額が○円で、年間○円ずつ追加投資したときにいくらになるのか計算したい場合があると思います。ただ、上記の計算を電卓でしようとすると、とても大変です。なぜなら、以下のような計算が必要になるからです。
- (1)初期投資額×リターン+年間積立額
- (2)1.の計算結果×リターン+年間積立額
- (3)2.の計算結果×リターン+年間積立額
- ・・・この計算を運用年数分続ける必要があります。
では、どうすれば、簡単に計算できるのでしょうか?
係数表を2つ用意し、それを使って計算しましょう。具体的には以下です。
1.必要な係数表を用意する
初期投資額が○円で、年間○円ずつ追加投資したときにいくらになるのかを計算するには、まず、係数表を2つ用意する必要があります。ただ、係数表といってもたくさんあります。では、どんな係数表が必要になるのでしょうか?必要な係数表は、"終価係数表"・"年金終価係数表"です。
まず、終価係数表を用意します。終価係数表は、初期投資分の運用結果を計算するために使用します。終価係数表とは、わかりやすくいえば、様々な条件(=リターン・投資年数)で"1円"を運用すると最終的にいくらになるか―をまとめた表です。実際に、終価係数表がどういうものか確認してみましょう。下にある「図:終価係数表」の、リターン:3.0%・投資年数:5年のところを見てみると、1.15927という数値が見つかります。つまり、上記の条件で1円を運用すれば、5年後に1.15927円になるということになります。本当に5年後に1.15927円になるか確認してみましょう。
- (1年運用後)1円×1.03%=1.03000円
- (2年運用後)1.03000円×1.03%=1.06090円
- (3年運用後)1.06090円×1.03%=1.09273円
- (4年運用後)1.09273円×1.03%=1.12551円
- (5年運用後)1.12551円×1.03%=1.15927円
上記のように、1円を運用すれば、5年後には1.15927円になることがわかりました。
図:終価係数表
3.0% | 3.5% | 4.0% | 4.5% | 5.0% | |
---|---|---|---|---|---|
5年 | 1.15927 | 1.18769 | 1.21665 | 1.24618 | 1.27628 |
10年 | 1.34392 | 1.41060 | 1.48024 | 1.55297 | 1.62889 |
15年 | 1.55797 | 1.67535 | 1.80094 | 1.93528 | 2.07893 |
20年 | 1.80611 | 1.98979 | 2.19112 | 2.41171 | 2.65330 |
25年 | 2.09378 | 2.36324 | 2.66584 | 3.00543 | 3.38635 |
30年 | 2.42726 | 2.80679 | 3.24340 | 3.74532 | 4.32194 |
35年 | 2.81386 | 3.33359 | 3.94609 | 4.66735 | 5.51602 |
40年 | 3.26204 | 3.95926 | 4.80102 | 5.81636 | 7.03999 |
45年 | 3.78160 | 4.70236 | 5.84118 | 7.24825 | 8.98501 |
50年 | 4.38391 | 5.58493 | 7.10668 | 9.03264 | 11.46740 |
なお、上の図に欲しい数値がない場合、「(1 + リターン)^投資年数」で、終価係数をご自分で計算することもできます。例えば、リターンが4.0%で、入社から定年までの38年(=60歳-22歳)の数値が知りたい場合は、(1 + 4%)^38=4.43881 と計算できます。また、リターンが1.0%で、投資年数30年の数値が知りたい場合は、(1 + 1%)^30=1.347848915 と計算できます。
参考記事:終価係数(ファイナンシャル・プランニング=6つの係数=) (外部サイト)
つぎに、年金終価係数表を用意します。年金終価係数表は、積立投資分の運用結果を計算するために使用します。年金終価係数表とは、わかりやすくいえば、様々な条件(=リターン・積立年数)で"年間1円"を積み立てながら運用すると最終的にいくらになるか―をまとめた表です。実際に、年金終価係数表がどういうものか確認してみましょう。下にある「図:年金終価係数表」の、リターン:3.0%・投資年数:5年のところを見てみると、5.30914という数値が見つかります。つまり、上記の条件で年間1円を積み立てながら運用すれば、5年後に5.30914円になるということになります。本当に5年後に5.30914円になるか確認してみましょう。
- (1年運用後)0円×1.03%+1=1円
- (2年運用後)1円×1.03%+1=2.03円
- (3年運用後)2.03円×1.03%+1=3.09090円
- (4年運用後)3.09090円×1.03%+1=4.18363円
- (5年運用後)4.18363円×1.03%+1=5.30914円
上記のように、年間1円を積み立てながら運用すれば、5年後には5.30914円になることがわかりました。
図:年金終価係数表
3.0% | 3.5% | 4.0% | 4.5% | 5.0% | |
---|---|---|---|---|---|
5年 | 5.30914 | 5.36247 | 5.41632 | 5.47071 | 5.52563 |
10年 | 11.46388 | 11.73139 | 12.00611 | 12.28821 | 12.57789 |
15年 | 18.59891 | 19.29568 | 20.02359 | 20.78405 | 21.57856 |
20年 | 26.87037 | 28.27968 | 29.77808 | 31.37142 | 33.06595 |
25年 | 36.45926 | 38.94986 | 41.64591 | 44.56521 | 47.72710 |
30年 | 47.57542 | 51.62268 | 56.08494 | 61.00707 | 66.43885 |
35年 | 60.46208 | 66.67401 | 73.65222 | 81.49662 | 90.32031 |
40年 | 75.40126 | 84.55028 | 95.02552 | 107.03032 | 120.79977 |
45年 | 92.71986 | 105.78167 | 121.02939 | 138.84997 | 159.70016 |
50年 | 112.79687 | 130.99791 | 152.66708 | 178.50303 | 209.34800 |
なお、上の図に欲しい数値がない場合、「(((1 + リターン)^積立年数) - 1) ÷ リターン」で、年金終価係数をご自分で計算することもできます。例えば、リターンが4.0%で、入社から定年までの38年(=60歳-22歳)の数値が知りたい場合は、(((1 + 4%)^38) - 1) ÷ 4%=85.97034 と計算できます。また、リターンが1.0%で、投資年数30年の数値が知りたい場合は、(((1 + 1%)^30) - 1) ÷ 1%=34.78489 と計算できます。
参考記事:年金終価係数(ファイナンシャル・プランニング=6つの係数=)(外部サイト)
2.用意した係数表を使って、最初に○万円投資し、年間○万円ずつ追加投資したときの運用成果を計算する
以上で必要な係数表(終価係数表・年金終価係数表)が用意できました。つぎは、係数表を使って、運用成果を計算しましょう。具体的には、係数表を使って、"初期投資分の運用結果"と、"追加投資分の運用結果"とを別々に計算し、最後に両方を合計します。
まず、"初期投資分の運用結果"を、終価係数表を使って計算します。終価係数表の数値は、様々な条件(=リターン・投資年数)で"1円"を運用すると最終的にいくらになるかをまとめたものですから、表の数値に"あなたの初期投資額"をかければ、その額を最初に投資して運用した場合の運用結果が計算できます。つまり、あなたの初期投資額が100万円なら、表の数値を100万倍すれば、運用結果が計算できることになります。以下で、初期投資額が100万円の場合の―運用結果を計算してみましょう。運用条件(リターン・投資年数)は、"リターン:3.0%・投資年数:5年"を使用します。上記の条件だと、終価係数は1.15927ですから、100万円×1.15927=115.927万円 と計算できます。
つぎに、"追加投資分の運用結果"を、年金終価係数表を使って計算します。年金終価係数表の数値は、様々な条件(=リターン・積立年数)で"年間1円"を積み立てながら運用すると最終的にいくらになるかをまとめたものですから、表の数値に"あなたの年間積立額"をかければ、その額を積み立てながら運用した場合の―運用結果が計算できます。つまり、あなたの年間積立額が60万円なら、表の数値を60万倍すれば、運用結果が計算できることになります。以下で、年間積立額額が60万円(月5万円)の場合の―運用結果を計算してみましょう。積立条件(リターン・積立年数)は、先ほどの例と同じもの(=リターン:3.0%・積立年数:5年)を使用します。上記の条件だと、年金終価係数は5.30914ですから、60万円×5.30914=318.5484万円 と計算できます。
最後に、"初期投資分の運用結果"と、"積立投資分の運用結果"とを合計します。つまり、"初期投資額を運用したもの"と、"積立投資額を運用したもの"とを合わせたものが、運用の成果になります。運用成果の例として、これまでの計算で使ってきた―運用条件(リターン3%・投資年数:5年)、金額条件(初期投資額:100万円・年間積立額:60万円)で計算してみましょう。
- 初期投資分の運用結果は、100万円×1.15927=115.927万円(終価係数表を使用して計算)
- 積立投資分の運用結果は、60万円×5.30914=318.5484万円(年金終価係数表を使用して計算)
- 両方を合計した運用成果は、115.927万円+318.5484万円=434.4754万円
上記の結果、運用成果は、434.4754万円だとわかりました。
参考:内藤忍 『【新版】内藤忍の資産設計塾』 株式会社自由国民社、2008年、181頁